――その光を見た時、全てが始まったのだと思った。
 同時に凡てが終わるのだと。




原始はじまりの光




「今の光は……」

 どこか、驚愕と畏怖の念が篭もった震えるような声が、窓の外に向けて呟かれるのをコレットは聞いた。
 いつもと同じ平和な授業風景を突如として変貌させた光は初めて見るものであるはずなのに、【神子】である自分にはとても違和感のないものに思えた。――或いは、漠然とした理解だけが既に広がっていて、心のどこかでそれを受け入れてしまっているせいかもしれなかった。
 覚悟にも似た想いは、他の生徒達のようにはしゃいだり驚いたり、感嘆といった感情を催すものではなかった。
 ただ、その時が来たのだと。
 唯一の例外が自分の幼馴染みで、神殿の様子を見に行ったリフィルに自習を言いつけられたにも拘わらず、ロイドは早くも教室を抜け出そうとしていた。
 もう一人の賢い幼馴染みの少年が諫めるも、ロイドは全く耳を貸さない。なんとか教室を抜け出ようとこちらに同意を求めてきたので、コレットは立ち上がってそれに答えた。

「コレットも気になるだろ?」

「……ロイドは、気になるの?」

「当たり前だろ!」

「じゃあ、わたしも気になることにする」

 幸い、ロイドはジーニアスを説き伏せる事に熱中しているようで、言葉の裏を読み取られるようなことはなかった。

 自分にとってあの光は、【天使】へ至る福音――【人間】としてのカウントダウンの始まりに過ぎない。

 それを知っているから、浮ついた気持になれなかったのだ。
 神子としての立場があるから、咄嗟にリフィルについて行こうとしたけれど。
 心のどこかで、醒めたような決意がスイッチを押されたかのように填って、動き出してしまった。
 自分は行かなければならない。
 コレット・ブルーネルという十六年の生を終えて、天使になる。



 それが、生まれてきた時からの定めと務めで、運命であって。





 張り切って教室を飛び出していく少年の後を微笑んでついて行きながら。
 この後の世界再生の旅を思って、コレットはそっと瞼を伏せた。